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これからの時代を豊かに暮らすために間取りとはどうあればいいのか?
時代によって変わってきたそれぞれの間取りを、
マンガ主人公の住まいからちょっと探ってみましょう。
例えば、磯野家の間取りでどうしても気になったのが茶ノ間の明るさです。北側で昼間もうす暗いはずです。ここに自然の光が差し込めば家族がより集まりやすくコミュニケーション豊かになるはずです。そこであまり使われない客間6畳をつぶして中庭とします。デッキが敷かれた中庭はそこで何をするという明確な目的はありません。逆にいえばだからこそ行為の違う空間を自由につなげることもできるのです。
つまり緩衝帯(バッファゾーン)を設けるのです。緩衝帯をスペースとスペースの間に入れることで空間はとても柔らかくなり人と人をつないでくれる役割をはたしてくれるのです。
国民的ホームマンガの代表作であるサザエさん家。原作漫画のサザエさんは昭和21年に福岡の地方新聞で連載が始まりました。テレビ漫画のスタートが昭和44年ですからまさに日本の住宅業界は好景気の時期と言えます。
改めて見てみると現代の感覚では三世代2家族の住まいにしては小さいと感じます。でもこの小さな住まいは日本人の生活の知恵がぎっしりと詰まっています。一般的にいう“田の字型プラン” の間取りですし和室が多いことも特徴です。田の字型プランは必要に応じて部屋の大きさを替えることができますし、和室は部屋の使い勝手を固定化しません。つまり日本人は“室”という空間の仕切り方ではなく“間”という仕切り方で住まいを構成してきました。これはそれぞれの空間を必要に応じて使い分けできるという、小さい住まいでも広く使える日本人の知恵なんですね。でも逆にプライバシーは確保しにくい住環境ともいえます。
このサザエさん家は昭和20年当時最も一般的な間取りです。家長(波平さん)の寝室と客間を日当たりのいい南側に配置し、個室や団らんの場である茶の間を北側に配置。トイレはくみ取り式が一般的でしたから住まいの一番奥に配置しています。広縁は別名“表廊下”とも言い、お客様専用の通路として利用していました。ここで注目したいのがサザエさんの部屋の位置です。所帯が別というのは言い換えれば別の家族です。磯野家とフグ田家を廊下を使って絶妙な距離感で分離しています。さらにもうひとつ子どもたちの部屋も注目です。
テレビでは広そうですけど実は4畳半を二人で使っていたのです。さすがにこの狭さだと部屋にこもりにくいですね。さらに茶の間のそばというのも家族とのコミュニケーションを活発にする要因なのかもしれません。玄関から“ただいま”の声が届きやすい場所に茶の間(団らんの場)があることも楽しく暮らすためには重要なのかもしれません。
この当時の間取りは家族のプライバシーを確実に確保することは難しいのですが、家族の和とか絆といった本来家族に大切なことが自然と育める工夫があるのかも知れません。それは他人への気遣いとか思いやり、開けられるけど勝手に開けないドアなど、大人の社会に巣立っていくための子どもたちへの“躾”も同時に行える環境でした。そんな住文化を育める間取りこそ、家族崩壊の危機といわれる現代に必要な環境なのかもしれませんね。
今どき厳格な順列がある家族なんて見かけませんが、両親を敬う姿勢や高齢者を労わる気持ちを養うという“文化”は残していきたいものです。